ウイスキーの原料は分かったけど、そもそもウイスキーってどうやってできてるの?
モルト、酵母、水を混ぜるってこと?
今回の記事では、ウイスキーができあがるまでの製造工程について解説していきます。ウイスキーの製造工程は、製麦(モルティング)→糖化(マッシング)→発酵(ファーメンテーション)→蒸留(ディスティレーション)→熟成(マチュレーション)→瓶詰め(ボトリング)の6つ。長くなりそうなので今回はPart1と題して前半の3つを取り上げていきます。それでは、ひとつずつ確認していきましょう。
製麦(モルティング)
収穫した大麦は選定され、粒の大きさで仕分けされます。こうすることで吸水や発芽のタイミングを均一にすることができます。選定された麦芽は、侵麦といい「水につける→乾かす」を繰り返し発芽の準備を促します。発芽の準備が整った大麦からは幼根が生え、このタイミングで撹拌の開始です。撹拌は5日~1週間程度。大麦の撹拌は自動で行うことが多いですが、なかにはフロアモルティングを行う蒸留所もあります。フロアモルティングとはモルトの撹拌を人力行う伝統的な発芽方法です。現在、フロアモルティングをしている蒸留所はスコットランドで9ヵ所。その他、通常はフロアモルティングをしていない蒸留所から特別にフロアモルティング麦芽のみを使用した限定のウイスキーが販売されることもあります。
フロアモルティングはかなり重労働な仕事です。絶えずスコップを使って撹拌をしているので職人は肩を痛めることがありました。その肩の痛みを「モンキーショルダー」と言うことがあります。職人の姿が猿に見えたからだとか…
撹拌を終え、発芽した大麦麦芽は熱源や無煙炭を利用し乾燥させられます。蒸留所によってはこのタイミングでピートを焚くことによって独特のピート香、薬品香をウイスキーにつけることがあります。
ここまでの製麦については、「モルトスター」と呼ばれる製麦の専門業者が請け負うことが多いとされています。安価で安定した品質を確保できるためです。1960年代あたりからモルトスターを起業することが増えてきました。
糖化(マッシング)
糖化の大きな目的は、「非発酵性糖類(例えばデンプン)をデンプン分解酵素(アミラーゼ)の力で分解し、酵母が食べられるサイズの発酵性糖類へ変える」ことです。難しいですね…
糖化をするにはまずモルトミルという粉砕機を使って麦芽を粉状にします。粉砕された麦芽のことをグリストと呼びます。グリストは粒の大きさによって、ハスク、グリッツ、フラワーの3つに分けられます。その比率は、2:7:1。続いてグリストと仕込水(約60℃~70℃)を1:4の割合でマッシュタン(糖化槽)へ投入します。マッシュタンの中は酵素が最も働く約65℃程度に調整し、レイキと呼ばれる熊手状の機械で撹拌させます。撹拌を終え、30分程経つと麦芽内のデンプンが糖に、タンパク質がアミノ酸へ分解されていきます。この工程では、仕込水の温度が重要となります。温度が高すぎると繊細な酵母が死んだり、活動が弱まったりしてしまいます。
発酵(ファーメンテーション)
糖化を終えた麦汁は約60℃から70℃程ですが、このまま発酵工程で酵母を投入してしまうと酵母が死滅してしまうため、ここから約20℃前後まで冷やす必要があります。この20℃という温度は酵母が最も働きやすい温度とされています。
発酵は、麦汁に酵母を投入し、その働きによってアルコールと二酸化炭素をに分解。アルコール度数7~9%ほどの発酵液(モロミ)を造る工程です。発酵工程は、麦汁の冷却→ウォッシュバック(発酵槽)へ移す→酵母投入→分解→完成となります。
発酵液(モロミ)のことを英語では、「ウォッシュ」って言うんだZE!
発酵は一般的に40~48時間程度です。蒸留所によっては72~120時間なんてところもあります。さらに長く発酵させる蒸留所や発酵工程を異常に長くした(正確には長くなってしまった)限定品も飲んだことがあります。発酵時間が長くなると酵母の働きが弱まり、いずれ死にます。そのあとに乳酸菌が発生し、乳酸菌発酵と呼ばれる発酵が進みます。発酵させている間、麦汁はウォッシュバックと呼ばれる発酵槽に入れられた状態で発酵を行います。こちらのウォッシュバック、容量はなんと10,000ℓ~100,000ℓとかなり巨大です。二酸化炭素が発生する関係で泡立ちもするため泡のデットスペースも加味した容量ですが。
10,000ℓはお風呂約40杯分!なんとなく想像できたかしら?
ウォッシュバックの材質は、伝統的にダグラスファー、オレゴンパイン(どちらも米松)などの木桶がメインですが、近年はステンレス製のものを使う蒸留所も増えてきました。木桶のメリットは、何度も同じものを使用することから木桶に住み着いた乳酸菌の影響で複雑な風味が得られること。ステンレス製にするメリットとしては清掃や衛星管理が容易などが挙げられます。
まとめ
製造工程の前半、製麦(モルティング)→糖化(マッシング)→発酵(ファーメンテーション)の3つを解説しました!いかがでしたでしょうか?少々マニアックな内容でしたが、細かく意識して飲むとウイスキーって楽しいんですよね~次回は、製造工程の後半戦!蒸留(ディスティレーション)→熟成(マチュレーション)→瓶詰め(ボトリング)について書きます。それでは、引き続き「知っておいしい、飲んでおいしい、ウイスキー」の世界へご招待します!酒巻さんちのウイスキーブログでした!最後まで読んでいいただき、ありがとうございました!
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